フリーランスにとって必須の確定申告、面倒ではありますが、今は会計ソフトに入力すれば簡単に必要な書類を作成することができます。
しかし、入力前に記帳方法など確定申告の前提についていろいろ調べてみると
- 人によって言うことが違う
- 税務のプロが誤解を招く言い方をしている
- 国税庁のHPが非常に分かりづらい
など、作業が迷宮入りしそうになることがあります。
確定申告をミスると加算税をかけられたり、青色申告する権利を取り上げられたりなど恐ろしいペナルティが課されることもあります。
ということで今回はそんな確定申告について、個人的に引っかかった点や最強に分かりづらい法改正について解説してみたいと思います!
青色申告に必要な書類
調べれば分かることではありますが、なかなか情報が散らかっていて分かりづらい申告関係書類。
青色申告に必要な書類は以下2つに大別することができます。
- 税務署に提出する書類
- 税務署に提出する必要はないが、保存しておくべき書類
税務署に提出する書類
- 確定申告書(三表、四表は必要に応じて提出)
- 青色申告決算書(損益計算書、貸借対照表含む)
- 本人確認書類(マイナンバー含む)
- 各種控除関係書類(社会保険、生命保険、ふるさと納税など)
税務署に提出する必要はないが保存しておくべき書類
- 総勘定元帳
- 仕訳帳
- 預金出納帳
- 現金出納帳(※)
- 売掛帳
- 買掛帳(※)
- 固定資産台帳(※)
- 棚卸表(※)
※web系フリーランスであれば必要にならない方が多いと思われます(固定資産台帳は高価な機材や持ち家、車があれば必要になることがあります)。
帳簿の作成
確定申告には様々な帳簿が必要になりますが、会計ソフトなら支出を入力するだけで全ての帳簿を作ってくれます。
管理人は弥生会計のクラウドソフトを使っていますが、本当に分かりやすくて初めてでも楽々確定申告することができます。
1年間利用無料という太っ腹っぷりなので、ぜひ試してみてください!
銀行口座の記帳範囲
支出や収入の手段として銀行の口座振替は欠かせません。
確定申告でお金の出入りを明確に示すため、日々の収支を記帳しなければならないのですが、事業専用の口座を持っているかどうかで記帳範囲が異なる場合があるのです。
ネットで調べてみたところ、某サイトのQ&Aに行き当たり、そこで税理士が以下のように整理されていました。
- 事業用口座を持っている→該当口座全ての収支を記帳(必然的に事業分のみとなる)
- 事業用口座を持っていない→プライベート分含めて全ての収支を記帳
口座が公私混同状態になっている場合には、とりあえず全て記帳し、プライベート分は「事業主が貸し借りしているお金」として処理するという考え方です。
もちろんこれは会計的に正しい処理ですが、プライベート分の支出まで全部記帳するとなると、かなり面倒です。
と思いつつ調べ続けていると、今度は会計ソフトの記帳ページに「事業関係の支出が少ない場合には、事業分のみ記帳すればOK」というような記載を発見しました。
- 税理士→プライベート分含めた全ての収支を記帳すべし
- 会計ソフト→事業割合が少ない場合は事業分だけ記帳すればよし
税理士と会計ソフト運営会社が言うことに食い違いが・・・
と思いましたが、一縷の望みをかけて国税庁の相談ダイヤルで聞いてみたところ、以下の回答を得ました。
- 事業分の支出が少ないなら事業分のみ記帳すればOK
- 事業分のみを記帳する場合、口座の残高を表示する必要はなし
- 事業分のみを記帳することで税務署が怪しむようなことはない
損失が出た場合の確定申告
事業が赤字の場合、給与所得などの他所得と損益通算すれば所得税の額を減らしたり還付を受けたりすることができます。
税額面以外にも知っておくといいことがある(かもしれない)ので、確定申告に関する小ネタを紹介します。
赤字申告の場合
赤字で申告した場合、青色申告だとその損失を3年間繰り越すことができます(白色は繰越不可)。
確定申告には期限があり、通常はその期限を超えると以下のようなペナルティがあります。
- 延滞税が課される
- 青色申告の控除額が適用されなくなる(控除額は白色と同じ10万円になる)
しかし、赤字の場合は期限後申告によるデメリットが実質的にありません。
- 延滞税計算の基になる所得税が発生しない
- 赤字なのでそもそも控除の適用がない
一方で繰越損失については期限後申告によるペナルティがないので、期限を超えてゆっくり申告しても特に不利な扱いを受けることがないのです。
株の損失繰越
管理人は個人事業主1年生のとき、スキルアップに惜しみなくお金を注ぎ込んだこともあって年間収支が赤字になってしまいました。
ついでに株の損失繰越もあるという地獄のような状況だったのですが、損失絡みの確定申告は以下が提出パターンのようでした。
- 通常の申告+株の損失→確定申告1〜3表
- 赤字申告→確定申告1、2、4表
事業も株も損失が出ている状態だと1〜4表全部出したい気持ちになるのですが、どうやらそんな提出パターンは存在しない模様。
ということでいろいろ調べた結果、このような状況の場合には確定申告1、2、4表を提出すればOKなようです、
電子帳簿保存法の改正
法改正により、2024年1月1日からフリーランスの確定申告が変わることになりました。
改正の概要としては「今まで紙ベースだった帳簿を電子で保存しようね」というものになり、詳細は国税局のHPに記載されています。
「帳簿を電子で保存」といっても全ての帳簿について電子保存が求められるわけではなく、任意のものと強制のものとに分かれます。
具体的な取り扱いは以下のとおりです。
①国税関係帳簿(確定申告書、青色決算報告書、仕訳帳などの付属帳簿)
→電子保存は任意
②紙ベースの取引関係書類(領収書など)
→電子保存は任意
③電子ベースの取引関係書類
→電子保存は必須
電子帳簿の保存要件
帳簿を電子で保存する場合には、いくつか求められる要件があります。
これを満たさないと電子帳簿という扱いにならないので、注意が必要です。
国税関係帳簿
確定申告書、青色決算報告書、仕訳帳などの付属帳簿を電子帳簿として保存するためには以下の要件を満たす必要があります。
- システムの説明書やディスプレイ等を備え付けていること
- 税務職員からのデータの「ダウンロードの求め」に応じることができること
- 正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)に従って作成されていること
- 自身が一貫して最初からパソコン等で作成していること
上記内容は国税局のHP、主に電子帳簿保存の特設サイトから拾ってきた内容です。
どうでしょう?これを見て具体的にどうすればいいか分かるでしょうか?
システムの説明書やディスプレイ等を備え付けていること
特設サイトにはこれ以上何の説明もありません。。。
急にシステムの説明書やらディスプレイやら言われてもなんのことやら・・・・
いろいろ調べた結果、どうやらこの文言は独自の業務システムを使って仕事している場合を想定しているらしいことが分かりました。
要は税務署職員が調査に来た際に、帳簿を見るための操作方法が分かる資料と確認に必要なディスプレイがあればいいということになりそうです。
税務職員からのデータの「ダウンロードの求め」に応じることができること
これは税務署職員が調査しに来た際に、電子ファイルを速やかに用意できれば良いということのようです。
正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)に従って作成されていること
会計ソフトを使っていればデフォルトで複式簿記になるはずなので、特に気にする必要はありません。
自身が一貫して最初からパソコン等で作成していること
当該年の取引は最初から電子で記録しましょう、途中からの電子化は認められませんということのようです。
優良な電子帳簿
電子帳簿には「優良な電子帳簿」という概念があり、一定の要件を満たすことで優遇を受けることができます。
要件は以下のとおりです。
- 訂正削除履歴の保存等
- 帳簿間の相互関連性を明確にする
- 検索機能の確保
そして、要件を満たせば以下の優遇措置を受けることができます。
- e-taxを使っていなくても65万円の青色申告特別控除を受けられる
- 過少申告加算税の税率が5%OFF!
優良な電子帳簿は要件が厳しく、この記事を書いている2024年3月時点では対応していない会計ソフトもあります。
優良な電子帳簿を備えていないことによるデメリットはないので、個人的にはスルーしてもいいかなと思っています。
電子取引書類
領収書などの取引を証明する書類についても電子保存のルールがあります。
条件は概ね国税関係帳簿と同じですが、電子取引書類特有のルールもあります。
改ざん防止のための措置
取引関係書類は改ざんを防止するため、以下いずれかの方法による措置が求められます。
- 改ざん防止のための事務処理規程を定める
- 書類にタイムスタンプを付与
- 訂正・削除の履歴が残るシステム等で書類を授受・保存
検索要件の充足
特設サイトのパンフレットには「検索要件の充足」という言葉のみがあり、肝心の要件は定義されていません。
いろいろ調べてみると、要は「特定の要素で取引を検索できるようにすればよい」ようです。
特定の要素というのは以下のとおりです。
- 取引日
- 取引金額
- 取引相手
※電子取引書類をすぐにダウンロードできるようにしている場合に限る
また、「検索できるように」というのは以下の形でも問題ありません。
- Excelなどの表計算ソフトで簡易のDBを自作
- 電子取引書類のファイル名に「日付、金額、相手」などを記載する
小規模事業者の場合、この検索要件を備えなくても良いようですが、その場合は紙ベースで書類を用意しなければならないようです。
それも日付、相手ごとに整理という面倒な条件つきなので、電子で整理した方が手間にならないと思われます。
web系フリーランスの確定申告まとめ
今回はフリーランスの確定申告について解説してみました。
最後に今回のまとめです!
- 青色申告で必要な書類は税務署に提出する書類と保存しておくだけでいい書類とに分かれる。
- プライベートの支出と事業支出を同じ口座から行っている場合、事業分の割合が大きくなければ事業分のみ記帳すればOK
- 事業が赤字の場合、期限後申告にデメリットはない
- 事業損失に加えて株の損失がある場合、確定申告は1、2、4表を提出
- 法改正に伴う電子帳簿保存の対象として、必須なのは元が電子データの取引関係書類だけ
- 電子帳簿には保存の要件があり、これを満たさないと電子帳簿扱いにならない
- 「優良な電子帳簿」を備えるメリットはそう多くないので、スルーしてもOK
- 取引関係の電子書類は改ざん防止措置と検索性の確保が必要
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