みなさんは確定申告で経費にできるものに迷いはないでしょうか?
初めて確定申告する場合には、経費にできるものとそうでないものが特に分かりづらいと思います。
経費計上できるものは個々の状況によるので、できるできないは一概に言えませんが、ポイントになるのはその支出が「事業に直接関係あるかどうか」です。
参考になるよう、具体的な費用を例に見ていきたいと思います。
web制作フリーランスが計上できる経費
web制作だと計上できる費用は結構限られます。
「サラリーマンは経費なんて計上できないから、うらやましい!」なんて言われてしまうこともありますが、実はそうでもありません。
サラリーマンは給与所得控除という経費相当額のものが自動的に所得から差し引かれるようになっており、実は結構な金額が非課税扱いになってるのです。
給与等の収入金額 (給与所得の源泉徴収票の支払金額) | 給与所得控除額 | |
---|---|---|
1,625,000円まで | 550,000円 | |
1,625,001円から1,800,000円まで | 収入金額×40%-100,000円 | |
1,800,001円から3,600,000円まで | 収入金額×30%+80,000円 | |
3,600,001円から6,600,000円まで | 収入金額×20%+440,000円 | |
6,600,001円から8,500,000円まで | 収入金額×10%+1,100,000円 | |
8,500,001円以上 | 1,950,000円(上限) |
これは「スーツ等々の経費が大体これくらいかかるよね?」と認められているお金で、年収500万円であれば、144万円が給与所得控除として非課税になります。
一方、フリーランスにこういう制度はなく、実際に必要になった経費のみを計上できることになっています。
では、以降で具体的にどんなものが経費になるのかを見ていきましょう!
なお、以下費用の名称は会計上の勘定科目とは一致しないので、あらかじめご了承ください。
家賃
自宅を作業場所としている場合、家賃を生活分と事業分とに分けて、事業分のみを経費にできます。
生活分と事業分の分け方は主に以下の2種類です。
- 面積按分
- 時間按分
生活スペースと作業スペースを明確に分けられる場合は面積で、そうでない場合は時間で割合を算出するのが一般的です。
また、居所と作業場所を別々に借りている場合は、作業場所の方を丸々計上することが可能です。
光熱水費
月々の光熱水費についても計上可能ですが、個々の費用については人によって見解が分かれる部分もあります。こちらも具体的な費用を確認していきましょう。
電気代
電気代はPCなど事業目的で使うことが明白なので、計上可能です。ただし、家賃と同じく全額ではなく、事業相当分のみ計上するようにしましょう。
水道代
水道代を経費にするかどうかは人により分かれるところかと思います。
「web制作するのに水って必要なのかい?」と問われると返すのが難しいので、個人的には経費扱いしない方が無難だと思います。
なお、自宅で来客対応や従業員の作業がある場合は、お手洗いなどの分を計上できると思います。
ガス代
ガス代を経費にするのはなかなか厳しいと思います。ガスとweb制作はリンクしようがない気がするので、こちらも経費扱いしない方が無難といえるでしょう。
なお、自宅で来客対応や従業員の作業がある場合は、湯沸かし分くらいは計上できると思います。
通信費
主な通信費は回線代です。
「いや〜web制作やってなければ携帯用の回線だけでやっていくんですけどねぇ」ということであればネット回線は全額計上できるでしょう。
また、モバイル回線も事業用として使っていれば経費計上可能です。事業と私用のものが共用であれば、例のごとく事業分のみの計上となります。
サービス利用費
サービス利用費は人によって差がありそうですが、web制作と関係しそうな費用を例示しておきます。
- スキル向上に必要な講座受講料
- 各種コミュニティの会費
- レンタルサーバーの利用料
- Adobe Creative Cloud等のソフトウェア利用料
- chatGPT等のツール利用料
- 会計ソフト(クラウド)の利用料
なお、勘定科目としてはスキルアップ関係の費用は「研修費」、それ以外のサービス利用については「支払手数料」などが考えられます。
旅費交通費
事業のために移動・宿泊した、ということであれば、それに伴う支出を経費にすることができます。
ただ、商談等の日時や場所が分かる書類など、事業の用であることが確認できる証拠は必要になるので注意しましょう。
また、宿泊は事業の用が終わった後、自宅に帰れるようであれば、経費としては認められないので、こちらも注意してください。
備品
備品とは10万円以上かつ1年以上耐用年数がある物品です。web制作だと備品にあたるのはPCくらいでしょうか。
備品は基本的に耐用年数等で按分した費用しか毎年に経費にできませんが、青色申告の場合は30万円未満のものは購入した年に一括で費用計上できたりします。
消耗品
消耗品とは10万円未満の物品です。
キーボード、マウス、書籍など関係する費用は無数にあるので、事業用に買ったものは忘れずに計上しましょう。
事業に紐づく税金
税金の中でも経費にできるものとそうでないものとがあるのでややこしいですが、事業に紐づくものは「租税公課」として経費にできます。
主なものは以下のとおりです。
- 個人事業税・・・事業を行っているために課税されるので経費計上OK
- 固定資産税・・・事業で持ち家などの資産を使っていれば経費計上OK
- 自動車税・・・・事業で自家用車を使っていれば経費計上OK
- 印紙税・・・・・契約書等の文書作成時に使ったものは経費計上OK
- 消費税・・・・・税込経理方式で記帳している場合のみ経費計上OK
その他
web制作にかかる経費は大半が上記のどれかに当てはまると思います。
当てはまらない場合には以下の視点で考えてみてください。
- 事業に直接関係あるかどうか
- 事業と支出が関係することを客観的事実で証明できるか
web制作フリーランスが計上できない経費
経費は全ての税金に有効なので、ある意味最も節税効果が高いといえます。
なので、少しでも多くの費用を経費としたいところですが、再三お伝えしているとおり、事業に直接関係ない支出は計上できません。
念のため、こちらも具体的な経費を確認していきましょう!
生活関連費
家賃、光熱水費の生活相当分はもちろんのこと、原則として食費も経費とすることはできません。
「食べないと仕事できないんだが?」と思わなくもないですが、食事そのものが利益に直結するわけではないので、経費計上できません。
また、シャンプーや洗剤などの日用品もweb制作とは直接関連しないので、経費計上しないように注意しましょう。
遊興費
友人などとの遊びに使ったお金は費用にできません。
居酒屋に行ったりした時に「経費にできるかも」と領収書をもらいたくなりますが、やはりこれも仕事の依頼など、事業に直接結びつくものでない場合はNGです。
福利厚生費
仕事の基本となる健康・体力維持のためにジムに通い、その会費を経費として計上する。
一見問題なさそうにも思えますが、これもNGです。例によって事業活動と直接の関係がないからです。これくらいは許してくれよ、と思いますよね。
しかし、健康・体力維持は重要な要素ではあるものの、「事業と間接的な関わりしかないよね?」ということで経費扱いが認められていません。
その他、福利厚生系は全て同様です。基本的に自分のためにかけるお金は経費にはなりません。
旅行交通費
私用の旅行・移動は一切経費にできません。私用と事業での旅行が混在している場合には、その境目を明確にした上で事業分のみ経費にすることができます。
逆に明確にできないならば、経費として認められない可能性が高いと考えましょう。
事業に紐づかない税金
税金は誰しもたくさん払わなきゃいけないものなので、残さず費用計上したいところですが、そうはいかないようです。。
特に以下のものは注意してください。
- 所得税・・・・・事業ではなく所得に対してかかるので経費計上NG
- 住民税・・・・・事業ではなく地方自治体のサービスに対してかかるので経費計上NG
国民健康保険・国民年金保険
国民健康保険、国民年金も経費計上はできません。
ただ、この2つに関しては所得税・住民税・個人事業税といった税金たちからは「社会保険料控除」として所得から差し引かれます。
なので、一応税金の負担軽減にはなります(そもそもコイツら自体が高すぎですが・・・)。
その他
その他経費にできない費用は無数にあります。しつこいようですが、「事業利益に直結しないもの」は基本的に経費にはならないと考えましょう。
逆に言えば事業利益に直結することを合理的に説明できれば経費にできるということにもなるので、このことは頭の片隅に置いておきましょう!
不適切な申告を行うとどうなる?
時々有名人の脱税などが報道されますが、実は脱税というもの自体は法律で定義されているものではありません。
なので、「脱税の要件に当てはまるからこういう罰になるよ」ということにはならないわけです。
過少申告加算税(少なく申告してしまった場合)
正当な理由なく期限内の申告について、修正・更正があった場合(更正というのは税務署側が行う修正)
課される金額
修正・更正によって増加する税額の10〜15%
その他
税務署からの書類提出要求に対応するかどうか等で5〜10%の加減算あり(要因は複数)
無申告加算税(申告していない場合)
正当な理由なく期限後に申告した場合、または期限後申告の修正・更正があった場合
課される金額
修正・更正によって増加する税額の15〜30%
その他
税務署からの書類提出要求に対応するかどうか等で5〜10%の加減算あり(要因は複数)
不納付加算税(払わなかった場合)
正当な理由なく期限後に納付、納税の告知があった場合
課される金額
修正・更正によって増加する税額の10%
その他
状況により5%の減算あり
重加算税(騙そうとしたり隠したりした場合)
仮装隠蔽があった場合
課される金額
修正・更正によって増加する税額の35〜40%
その他
過去の申告状況等により10%の加算あり(要因は複数)
刑罰
上記の重加算税にあたるような悪質性の高い行為で高額のものについては、逮捕されることがあるようです。
刑罰は10年以下の懲役、1000万円以下の罰金、またはこれら両方です。
税務署の税務調査とは?
税務署等の税務機関には申告内容を含めた税に関する調査権限が与えられています。そして、この調査権限は強制的に家宅捜索を実施できるほど強力です。
家宅捜索までされるのはかなり悪質性が疑われる場合に限られますが、任意の形で調査依頼が来ることもあります。
- 個人事業主の場合、調査の網にかかる確率は1%未満
- 最長で7年分の申告を遡って調査される
- 調査対象となった場合、相手は最初から粗探しする気マンマンなので、相当厳しく見られることになる
- 税務署の調査権限はとても広く、銀行口座なんかもその範囲内(お金の流れは簡単に裏を取れる)
- 強制調査は鍵を破壊してでも家宅に入ることができる。もちろんそれも合法。
強制調査はその名のとおりとても恐ろしいものですが、調査の連絡が来る場合はほぼ任意のものです(任意と言いつつ実質的には拒否できませんが・・・)。
ではどんな人が調査の網にかかりやすいでしょうか?
- 事業規模が大きい
- そもそも申告していない
- 帳簿に抜けや誤り等の不備がある
- 業種平均と比べて妙に経費が高い
- 申告に不備が多い業種になっている
- 過去に悪質な申告をしている
- 消費税免税ライン(課税売上1000万円)をギリギリ下回ることが多い
ルールをしっかり守って申告していれば、web制作のフリーランスが調査の網にかかる可能性はかなり低いと思います!
意図しない不正を防ぐために日常的な記帳を!
意図していなくても、結果として申告が不適切になってしまえば、罰則が適用されてしまいます。
収入の計上にしても経費の計上にしても、一定期間分まとめてやろうとすると、どうしてもミスが生じてしまうものです。
なので、記帳が必要になった都度、コツコツ会計ソフトに入力していくのが一番だと思います。
会計ソフトは利用料の安さと使いやすさに定評がある弥生がオススメです!
web制作フリーランスの経費まとめ
今回はweb制作フリーランスの経費について解説させていただきました。
少しでも参考になる部分があれば嬉しいです!
最後に今回のまとめです!
- 事業に直接関係する費用は経費として計上できる
- 税金には経費計上できるものとそうでないものとがある
- 私的な用途にかかる費用は一切経費計上できない
- 事業と私的用途が混在する場合は、該当費用を割合で按分して事業分のみ経費にする
- 不適切な申告には罰則がある(主に罰金)
- 税務署の税務調査に当たる確率は1%程度だが、当たれば最大で過去7年分遡られる
- 税務署の調査権限は強力、基本的に嘘は通用しない
- 税務署の調査には網にかかりやすくなる要因がある
- 意図していなくても不適切な経費計上は不正扱いになる
- 記帳は日々やるべし!
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